Log.06 現場から始める、ということ
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もともと私は、
大きな会社の中で、
大きなブランドを相手に仕事をしてきた。
日本向けの製品を作るために、
現地、つまり海外の工場に直接入り、
品質や仕様の改善を一緒に進める。
もちろんやったことなどなく、全てが手探りである。
求められる基準は高く、
決して楽な仕事ではなかった。
異国から来た、
よく分からない人間に、
細かい指摘をされる。
正直、面倒なことばかりだったはず。
それでも、その工場には、
この機会にもっと良くなりたい、
というエネルギーがあった。
その姿勢に触れたからこそ、
私も、持っていることを
真剣に伝えようと思えた。
現地に滞在している間の食事は、
工場の食堂で、彼らと同じものを食べ続けた。
特別なことではないが、
同じ時間、同じ食事を共にすることは、
思っていた以上に距離を縮めてくれた。
「同じ釜の飯を食う」という言葉があるが、
その感覚は、
国や言葉が違っても、
自然と伝わるものなのだと感じた。
同じ時間を過ごし、
同じ方向を見ながら、
ものづくりを続けてきた。
ただ、それは「会社」という後ろ盾があってこその関係だと、
当時は思っていた。
独立してからは、
何も保証はなかった。
大きな金額を約束できるわけでもない。
私のブランドを、
一緒にやる理由もなかったと思う。
だからこそ、
メールや電話ではなく、
私は、もう一度現地へ行くことを選んだ。
2025年4月。
数年ぶりに現地へ向かった。
たった数時間、
顔を合わせて、
自分がやりたいことを伝えるためだけの出張だった。
結果として、
その考えを受け入れてもらい、
Yacraphは、最初の一歩を踏み出した。
私が現場に行く理由は、
ここにある。
関係は、言葉だけでは始まらない。
私にとっての現場は、
服を作る工場だけではなく、
それを届けてくれるお店も含めた場所だ。
顔を合わせ、
同じ時間を過ごすことでしか、
生まれないものがある。
ものづくりも、
その延長線上にあると思っている。
自分が関わる人には、
できるだけ幸せであってほしい。
それは、仕事かどうかに関係なく、
私の中で変わらない、人としてのスタンスだ。
そうした関係の中から生まれたものは、
時間を重ねながら、
誰かの生活に残っていく。
そんな未来を信じながら、
私は、これからも現場に足を運び続けたいと思っている。