log.02 あの年の、あの色
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ヤクという素材を扱い始めてから、
色に対する感覚が少し変わった。
Yacraphで使っているヤクは、
基本的に染色をしていない。
モンゴル国の遊牧地域で育ったヤクが持つ、
そのままの色をできるだけ活かしている。
だから、毎年まったく同じ色にはならない。
同じ土地で育ったヤクでも、
年ごとに毛の色や表情は少しずつ違う。
赤みを感じる年もあれば、
少し影を含んだような色に寄る年もある。
原毛を並べて見ると、
「あ、今年はこういう色なんだな」
と分かる瞬間がある。
それは欠点というより、
その年の気候や環境が
素材に残っているということだと思っている。
色を揃えようと思えば、
方法はいくらでもある。
けれど私は、
その年にしか出なかった表情まで
均してしまう必要はないと感じている。
この感覚は、
ワインに少し似ている。
同じ土地、同じ品種でも、
ヴィンテージによって味が変わるように、
ヤクの色にもその年ごとの個性がある。
だから私は、
「あの年の色、良かったよね」
と後から思い返せるような【服】を作りたい。
Yacraphでは、
同じ色名であっても、
毎年まったく同じ色を再現することは前提にしていない。
その年の素材を見て、
その年なりの最善を探していく。
無染色であることも、
目的ではなく、
ヤクという素材を理解するための方法のひとつだ。
必要であれば、
別のアプローチを選ぶこともあると思っている。
大切なのは、
色を固定することではなく、
その色に理由があること。
ヤクの色には、
育ってきた環境と時間がそのまま滲んでいる。
私は、その揺らぎごと、
記憶に残る一着にしたいと思っている。